【共通テスト】英語の民間試験が反対される理由

大学入学共通テスト

2021年1月から、センター試験が廃止されて、大学入学共通テスト(共通テスト)に変更になります。(変更点については「共通テストとセンター試験の違い」で解説しています)

英語科目の民間試験導入については様々な議論を呼んでいます。

2019年6月18日には民間試験の中止を求める国会請願書が提出されました。

これには約8,000筆の反対署名が集まりました。

なぜ民間試験が反対されるのかを今回はまとめてみました。

【追記】
2019年11月に民間試験の導入は見送られましたのでご注意ください(文科省発表)。

記事の内容
  • 民間試験が反対される理由
  • 民間試験の問題点
  • 各大学の対応
  • 中止の可能性はあるの?
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大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求める国会請願書

2019年6月18日に民間試験の中止を求める請願書が国会に提出されました。

そして、京都工芸繊維大の教授らが記者会見を開き、文部科学省に対して民間試験の中止を求めました。

約10日間の短い期間で約8,000筆の反対署名が集まったことからもわかるように、民間試験の導入は多くの人に批判されています。

今回は民間試験を反対している方々の意見をまとめて紹介します。

民間試験が反対される理由

検定料や実施回数が不平等である

受験生は、GTECや英検などの複数の民間試験を受ける選択肢が与えられます。

複数の試験で検定料や実施回数がバラバラであることが問題視されています。

検定料の格差
  • 英検3級はおよそ6,000円
  • IELTSはおよそ2,6000円

経済的状況によって、不利を受ける受験生が出ることが懸念されます。

また、試験によって年間の試験回数が2~28回と大きく異なり、開催地域もバラバラです。

離島などで、受験機会が得にくい受験生もいるでしょう。

各試験の検定料やレベルの比較は「英語の民間試験をすべて比較してみた!」で紹介しています。

CEFRと民間試験の対応に根拠がない

各資格・検定試験とCEFRとの対照表(文部科学省より)

複数の民間試験の結果を統一した基準で評価するために、CEFR(セファール)という国際基準でA1~C2の6段階評価されます。

ここで、CEFRと各民間試験の対照関係に科学的根拠がないことが問題点として挙げられています。

例えば、X君がTOEFLで42点を取りB1レベル、Y君がTEAPで220点を取りA2レベルになったとします。

この場合B1レベルのX君が、A2レベルのY君よりも成績が上になります。

ただ、「本当に、X君のほうが英語力が高いのか?」「CEFRと各民間試験の対照関係が本当に信用して良いのか?」

という問題が生じてしまいます。

科学的根拠がないCEFRを信頼すべきではないと批判されています。

各大学の民間試験の扱いがバラバラ

民間試験をどう使うかは各大学に委ねられていますが、各大学でその扱いがバラバラで、受験生への負担が懸念されます。

いくつかの大学について具体的にみてみましょう。

各大学の民間試験の扱い
  • 東京大学、京都大学、大阪大学
    民間試験のA2レベル以上を出願資格とする。事情がある場合は、高校によるA2以上の英語力証明、または理由書の提出を求める。(参考:東大の民間試験の採用について

  • 岡山大学
    受験者全員に民間試験の受験を課す。

  • 三重大学
    C1レベル以上には加点を行う。受験者全員に民間試験の受験を課す。

※2021年実施の大学入試では、国立大全82校のうち、79校が何らかの形で民間試験を活用すると発表しています。北海道大学、東北大学、京都工芸繊維大は一切使用しないとのことです。

トラブルなく実施できる保証がない

運営拡大に伴って、会場や、試験監督の不足が懸念されます。

50万人規模の大学入試に民間試験を導入するために、民間試験の運営規模も拡大が必要です。

急いで会場や人手を拡大すると、カンニングの隙が生じるたり、厳正に監督できない試験監督が混ざってしまったりする可能性が生まれてしまいます。

何十年の実績があるセンター試験ですら、毎年、

  • 「リスニング機材が故障」
  • 「雪で試験開始が遅れる」
  • 「試験監督が間違えて2分早く終了」

などの問題があります。

急ピッチで準備して、全ての民間試験でトラブルなく運営できるのでしょうか。

試験の質や運営を民間に丸投げ

各試験で根本的な目的が違います。

GTECなら「日常・ビジネス英語」ですし、TOEFLなら「学術向け英語」です。

試験ごとで出題内容が異なる事で公平性が保たれませんし、文科省が発表している学習指導要領に合っているとも言えません。

また、運営に関しても民間企業に丸投げされる形となっています。

各試験で採点者が異なりますし、障害者への対応もバラバラです。

民間試験は中止になるの?

英語を「話す」能力を伸ばすために導入された英語民間試験ですが、様々な問題がありますね。

民間試験の中止を求める請願書が国会に提出されましたが、

2021年実施の大学入試では民間試験が中止になることは無いでしょう。

各大学も民間試験について正式に決定していますし、中止にすると、さらなるに混乱を引き起こすことが予想されます。もとに戻ることはさすがに考えにくいです。

民間試験を受ける場合は「民間試験を選ぶ時の注意点」を参考にしてみてください。

追記
TOEICは2021年の大学入試では使えないことになりました。大学入試英語成績提供システムの参加を取りやめました(2019年7月2日のプレスリリースより)。この流れに続く民間試験も増えてくる可能性があるので、試験の選択には注意しましょう。

追記】
2019年11月に民間試験の導入は見送られましたのでご注意ください。

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